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吉田健一

吉田 健一
(よしだ けんいち)

戦略コンサルティング会社を経て、Abalance社取締役 COO。KM・情報共有・企業変革コンサルティングをソニー、NTT、丸紅等の国内外の大手企業に対して手がける。

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ナレッジ・センターによる情報目利き力の向上
~ 三菱東京UFJ銀行法人部門の「ヒトのチカラ」による情報流通改革 ~

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取締役 COO
吉田 健一

 Google時代の今日、情報共有はもはや当然となり、膨大な情報の中から本当に価値のある情報だけをピックアップする「情報目利き力」が重要になりつつある。社内情報流通をコントロールするナレッジ・センターを立ち上げ「ヒトのチカラ」で情報流通改革に取り組む三菱東京UFJ銀行法人部門の事例から、組織としての「情報目利き力」の高め方を考察する。

1.情報共有で生産性は上がったか?

 情報共有システムの導入ブームから10年近くが経った。今や周りを見回せば、電子メール、イントラネット、ファイルサーバー、CRMシステム、社内ブログと、システム乱立に食傷気味なくらいだ。果たして、こうした情報共有によりナレッジ・ワーカーの生産性は上がったのだろうか?

 情報共有システムの普及は「情報共有」を通り越し、「情報洪水」と言える状況を生み出した。毎日何十通ものメールを捌き、本社から矢のように送られてくる業務連絡を読み飛ばし、ファイルサーバーでは過去のファイルの山からお目当てのファイルを探し出すのに血眼になっているうちに数十分が過ぎる。こうした「情報の海で溺れている」仕事ぶりも珍しくない。

 情報洪水の被害をもっとも受けているのがミドルである。ミドルの重要な役割の一つは、トップからの方針・指示を噛み砕いて部下に伝えるという「情報ハブ」である。しかし、人員削減により自らもプレイングマネジャー化しているミドルは、増加する一方の情報量にハブ機能を果たせなくなっている。情報洪水は非効率に加えて、コミュニケーション不全の原因にもなっているのである。

 では、情報洪水に対する処方箋は何だろうか。ITでの解決がすぐに思いつくが、ITで引き起こされた問題をITで解決しようというのは「迎え酒」のようなもので、本質的な解決にはならない。問題はITが無いことではなく、ITを使いこなせていないところにあるのである。

 こうした中、情報洪水の問題をITに押し付けるのではなく、「ヒトのチカラ」で解決するという取り組みが起きつつある。本稿では先進事例として三菱東京UFJ銀行法人部門における情報流通改革を紹介する。

2.商品多様化と手続高度化がもたらす金融現場の情報洪水

 三菱東京UFJ銀行では2003年、情報共有の推進を目的に他行に先駆け、行員が情報の玄関であるポータルから社内の共有情報すべてにアクセスできるようにした。これにより全行員がオープンかつフラットに情報共有ができる環境が確立した。それから5年、情報共有は社員に浸透し、大きな成果をもたらした。そして、情報共有の次のステージを模索し始めた。そのテーマが、量から質への転換である。

 金融ビックバンによる取り扱い金融商品の増加と金融商品取引法の施行による事務手続の複雑化という環境変化もあり、本部から現場に展開される情報量は爆発的に増加した。現場行員に対して本部から1日あたり以前の数倍となる60~80通の情報が配信される状況になっていた。現場行員はお客さま訪問や窓口対応が本業であり、PCに向かい情報を読むのに使える時間はあまりない。

 結果、「情報は大量に発信されているが、現場が活用できていない」という状況に陥った。多くの情報は見ずに「流して」しまっていたのである。こうした情報洪水は、現場行員の生産性に悪影響を及ぼすだけでなく、本来活用すべき情報が埋もれてしまうという問題につながっていた。

 こうした状況の中、三菱東京UFJ銀行で法人向けビジネスを担う法人部門において、情報共有の次のステージに向けて情報の量から質への転換を模索する取り組みが始められた。

3.業績の良い営業は「情報目利き力」が高い

 三菱東京UFJ銀行の法人部門では現場営業担当のことをRM(Relationship Manager)と呼ぶ。RMの情報利用パターンを分析していくと、興味深い事実が明らかになった。業績の良いRMは、提案書、金利為替レート、業績計数といった情報を平均よりも多く使っていたのである。すなわち「業績の良いRMは膨大な情報の中から必要な情報をすばやく判別し、効果的に活用している」といえる。

 RMが業務で利用する情報には2種類ある。1つは、業務上必ず使用せねばならない「必須情報」であり、商品情報や事務手続・書式等がこれにあたる。もう1つは、必ずしも使わなくてもよいが、知っておくことで業務の質が高まる「付加価値情報」であり、商品・サービスの提案書や金利為替レートがこれにあたる。業績の良いRMは「情報目利き力」によりこれら両方の情報を効果的に活用している。

 「必須情報」は、業務を進める上で欠かせない情報であり、いかに早く正確な情報にたどり着けるかが業務効率に関わってくる。業績の良いRMはそもそも活動量が多く、大量の「必須情報」を捌く必要があるため、情報アクセスの効率を高めることで、お客さま対応や提案立案の時間を生み出しているといえる。

 一方、「付加価値情報」に関しては、アクセス効率よりも真に価値のある情報を探し出し、うまく活用することがお客さまのニーズ引き出しやニーズにかなった提案の創出という業務の質向上が鍵となる。業績の良いRMは膨大な情報の中に埋もれている付加価値情報を発掘することで、ソリューション力を高めているのである。


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